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つくり手の言葉
お盆を過ぎましたが、暑さが和らぐどころか勢いを増すかのような日差しですね。
屋外での作業では、空調ベストが役に立っているのか全く分からないくらい温風をベストの中に入れています。
もう、立ち合いだけの時用に、日傘買おうかしら・・・
さて、そんな猛暑を超える暑さの中、冷房の重要性が増していますね。
一時は床下エアコンによる暖房がブームとなり、今や高性能住宅界隈では一般化しつつあります。
床下エアコンによる暖房って、意外と簡単。
暖まった空気は比較的軽いため、上へ上へと上昇します。
床下の気密とって、吹き出し口前の障害を計画時に取っ払ってあれば、ある程度まではスムーズにできてしまうものです。
しかし、エアコンを屋根裏に入れて冷房しようって事になると、途端に難易度が上がります。
気密・断熱をある程度しっかり施工できるようになった建築会社でも、うまくいかない事が多いのです。
最近も、九州の工務店さんから、インスタのメッセージで質問を頂きました。
「屋根裏エアコン計画した所が、なかなかうまくいかなくて・・」
そうなんです。簡単じゃないんです。
「床下エアコンの逆だから、屋根裏にエアコン入れて冷やせば、冷たい空気は勝手に下に落ちるんでしょ?」と思ったアナタ、
よくわかっていらっしゃる。
その通りです。
その通りなんですが、細かく言うとちょっと違う。
冬は端的に熱だけ動いてくれれば、何とかなるのですが、夏は熱+湿度(顕熱+潜熱)両方に対応する必要があります。
つまり、夏は動かすエネルギー量が大きい上に、それなりの部屋間の空調経路が整っていないと、部屋ごとの体感差が大きくなりやすいんですよね。
そこを計画し、万が一のリカバーできるようにしておけるかがポイント。
さて、では根本のお話。
ナゼ屋根裏エアコンにしたいのか?
家を建てる方々からすれば、「ひとつのエアコンで全館涼しいらしいから。」って事ですよね。
では、建築会社側が屋根裏エアコンを始める理由と言えば、
「エアコンが1台で済めば設備費用を安くできて、お客様へ提案しやすい。」
「1台で全館冷房できるなら、性能アピールできそう。」
「エアコンが表に出てこない事で、意匠性を高めたい。」
「お客様に、できないか聞かれるから。」
こんな感じでしょうか?
これ、屋根裏壁掛けエアコンである理由なくないですよね。
吹抜設置にしてもいいし、ビルトインエアコンでダクティングしてもいい、隠すなら造作でうまくできるでしょうし、方法論はいくらでもあるんです。
屋根裏にエアコンを入れ込もうとすると、空気の循環ルートは検討しなきゃいけないし、屋根裏へのリターン(部屋側から戻ってくる空気量)の検討はしなきゃいけないし、とっても大変。
じゃ、なんでオースタムで提案するの?
それは、居室で冷房の風を感じたくないから。
女性の多くは、夏の冷房の風がキライ。
冷えすぎちゃうんですよね。
例えば吹抜設置にして、ガンガンに風が吹いていたら・・・
ダクティングして吹き出し口から風が出ていたら・・・
もちろん、風が当たりにくいように配置設計はできるけれども・・・
極端な冷房表現に、「鍾乳洞の中のような」ってのがあります。
宇都宮にも大谷石採掘場などありますが、風が吹くのではなく、空間が冷えているカンジ。
あれが、冷房の理想だと思います。(温度は適温でね)
ちなみに、「高性能住宅だったら、すぐに設定温度になるから、冷房の風がガンガン当たるなんてことはないはずだ!!」と思った方、
たくさん勉強されていますね。素晴らしいです。
でも、エアコンが止まっているという事は、その時間、除湿は行われて・・・
いないんです。
エアコンは冷媒を冷やしてそこに風を当てて冷風を作っています。
冷媒に風が当たったときに結露した水を屋外排出することで、室内の湿度を下げています。
設定温度に達したエアコンは、運転をやめます。
すると、除湿も止まります。
温度は設定どおり。
でも、なんだかジメジメ。
ある一定以上の高性能住宅を作ると必ずぶち当たる壁です。
対応策は2つ。
①設定温度を下げて、冷房運転が止まらないようにする。
②エアコンの機種・容量設定をピーキーに行い、冷房運転が止まらないようにする。
どちらにせよ、極力止まらないようにしないと、日本のジメジメ夏において、20L/日以上の湿気の排出はムズカシイ訳です。
だから、エアコンが動き続ける状態を作りたいというのが理想。
ここまで読んだ方だと、「あなたの物件が屋根裏エアコンはじめて採用します!」という建築業者さんに、任せるのはちょっと危険と思うかもしれません。
意外と事実です。
弊社も25年以上、全館空調をご提案し続けて、時代の変遷とともに、色んなチューニングを行ってきました。
ファース工法、Tシャツの家、それぞれに特徴がありますが、それぞれが工務店として経験を重ねた結果。
もちろん、チマチマと新しいことを試させて頂いたり、お引渡し後に調整をさせて頂いたり、エアコンが壊れたら交換したり、そのタイミングで別方式に変更を提案したり、メンテナンスも含めて、一棟一棟、建てる場所も、向いている方角も、暮らす人も違うので、常々勉強です。
ちゃんと、暮らすご家族に沿ってチューニングできると、住宅空調ってメチャクチャ楽しいですよ。
あ、8/30・30は構造見学会です。
ご予約お待ちしております。
hiroyuki