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つくり手の言葉
梅雨も明け、蒸し風呂のような毎日。
外に出るのが恐怖でしかないですよね。
現場で作業をしている大工さんをはじめとする職人さんにとってはキツイ季節です。
さすがに大工さんの健康を考えて、今年から現場に仮設エアコンを設置することを決めました。
無理なく、うまく運用してほしいものです。
さて今日は、家の外壁につく緑のものについてお話を。
住宅も建築して年数が経ってくると外壁、特に北側などに、緑色のものが発生してきます。
コレ、何なのか疑問ですよね。
皆さんも多くは、「カビ」ではないかと思っているかもしれません。
でも、実は違いました。
先日、広島工業大学 工学部 建築工学科 講師の 中嶋麻起子先生のセミナーを拝聴しました。
中嶋先生は、京都大学大学院在学中から、「建物外壁面における藻類生育と周辺環境条件の関係」について研究されている、建築環境工学の専門家です。
先生が、この疑問に回答をくれました。
建築物の外壁面に付着する奴らの種類は大きく3つ。
①コケ類
水、光、空気で生育。湿った環境を好み、乾燥すると死滅。
光合成により有機成分を作りせるので、無機成分のみで飼育可能。
通常は10~20℃、耐寒性が高い種が多く、中には耐熱性を持つ種も。
仮根によって材料表面に付着するため、材料に物理的なダメージをあたる可能性がある。
②藻類
光、水にて生育。乾燥すると休眠状態になるが、水分が補給されると活性化する。
光合成により有機成分を作りせるので、無機成分のみで飼育可能。
通常は20~30℃、光合成は40℃前後まで可能だが増殖は35℃まで。
コケ類に比べ耐寒性が高く、不敵な環境では休眠状態になる。
細胞が表面に付着し増殖するため、材料に物理的なダメージを与えることはほとんどない。
ただし、膜状になった藻類の乾燥収縮などによる塗料の剥がれが生じる可能性あり。
③地衣類
真菌+藻類の共生体。
光と水で生育。共生菌糸が遮光するため直射光にも強い。
常に湿った環境は苦手で、定期的な乾燥状態が必要。
光合成により有機成分を作りせるので、無機成分のみで飼育可能。
表面のカビ類により内部が保護されている為、0~30℃で生育可能。
コケ類、藻類に比べ、更に乾燥に非常に強いが、生育速度は遅い。
酸を分泌するため、材料に物理的なダメージを与えうる。
どれも、生活の中で見かける奴らですが、それぞれ違う生き物。
よく見れば、ルックスの特徴も大きく違います。
今日は3つの中でも、壁に注目してみましょう。
外壁の北側を中心に、格子状にできる線。
この部分が緑色のラインになっているお家、見かけますよね。
これが上の②藻類です。
昔は断熱の不足によって内部結露を起こすことによって藻が生えると考えられてきました。
では、高断熱化が進む現代の住宅では起こらないかと言うと、そうではないのです。
高断熱化した断熱部と下地として内側にある木材の差によっても発生してしまうのです。
原理としては、夏の夜に放射冷却により表面温度が低下することにより外壁面の相対湿度が高くなります。
外気の露点温度より表面温度が下がると結露が発生します。
この表面の相対湿度の差が連日起こり続けることにより、藻が生えるのだそうです。
では、どのように防ぐか。
構造的に防ぐのは、正直ムズカシイのだそうです。
だから、リスクを減らすには、汚れを放置しない事が重要。
定期的な洗浄、つまりは散水するだけでも、早期の汚れの除去で胞子や栄養を減らし、定着を遅らせることができるのだそうです。
定期的に水をかける。これが大事。
ただし、気を付けたいのが水のかけ方。
ついつい、キレイにしたいと高圧洗浄機を持ち出したくなる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、先生曰く、
「高圧洗浄機を使用すると、外壁表面に微細な傷が生じる為、藻類の胞子が逆に付着しやするので注意が必要」なのだそうです。
もちろん、ガルバリウムの外壁などは圧かけるとへこみますので危険ですしね。
住宅の外壁をキレイに保つために、数か月に1度、外壁に水撒きを。
是非、お試しください。
hiroyuki