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つくり手の言葉
先日、S様邸の完成に伴い、気密測定を実施しました。
測定は、毎度お世話になっている、那須のエムワンプレスさん。
自身もファースの家を施工し、気密・断熱性能に優れた住宅を施工されています。
今回の計測で、思いがけない数値が出たので、その騒動について書きたいと思います。
まずはそもそも気密測定ってナゼ必要なのでしょうか?
快適な暮らしを求める方は、まず、しっかりとした断熱施工が必要となります。
断熱すれば、夏の暑さ、冬の寒さを凌ぐことができますよね。
でも、いくら断熱しても、あちこちに隙間があったら、外の寒い(暑い)空気が家の中に入り、暖房(冷房)で暖めた(冷やした)空気が外に出ていってしまいます。
快適に暮らせる住宅をつくるにあたり、断熱と気密は両輪なのです。
更に、家の中で人が暮らせば、家の中の空気が淀みます。
この空気を適切に換気してあげることが、健康的な住環境には必要です。
換気をするにあたり、あっちこっち隙間があったのでは、家中のバランス良い空気の入れ替えの計画などできません。
あっちこっちで勝手気ままに空気が入れ替わったり、入れ替わらなかったり、正に風の向くまま。
そのため、しっかりと隙間を無くすことで、必要な場所で必要な分だけ空気の入れ替えを行う事で、健康的な住環境とロスの少ない冷暖房を行う事ができます。
では、その「気密」ってどうやって測るのでしょうか?

気密測定の様子はこんな感じ。
家中の窓と玄関ドアをしっかり閉めて、一か所の窓に目張りをして気密測定器を取り付けます。
この測定器は、ファン、圧力センサー、計測器の3パーツでできており、運転を開始するとファンが稼働し、室内の空気を屋外へと排出します。
室内の空気が外へ出て聞くと、室内の気圧が下がります。
圧力センサーが、屋外と室内の気圧の差がどれくらいか高精度で測定してくれます。
隙間があると、外からどんどん空気が入ってくるので、圧力差が小さくなっていきます。
圧力の変化と、空気の出し入れの量から、計測器が「隙間相当面積(以下、C値)」を計算してくれるという寸法です。
C値は数字が小さいほど、隙間が少ないという意味になります。
2.0より1.0の方が隙間は少ないし、1.0より0.5の方が更に隙間は少ない。
気密をまったく気にせず建てられた築20年くらいの住宅が、C値2.0㎠/㎡以上なイメージ。
気密を気にして施工した、高気密住宅と言える数値が、1.0㎠/㎡くらい。
0.5㎠/㎡を切っていると、しっかりと計画換気ができる間違いのないレベル。
オースタムは、Tシャツの家を施工する際、気密測定を全棟行っています。
0.3㎠/㎡以下をお約束しています。
今回の1回目の計測・・・0.5㎠/㎡
ヤバーい!!💦
一般的な値でいえば、十分なレベルかもしれませんが、ここ数年0.3㎠/㎡を超えることなどないので、一瞬焦ります。
この数値だと、経験上、間違って窓が1カ所空きっぱなしになっていてもおかしくないくらいの数値です。
気密断熱施工は通常通りのマニュアルで行っているので、まずは空気が入ってきている場所を探します。
そしてわかったのが・・・

浴室換気扇。
電気屋さんが、まだ換気扇を配管に繋いでいませんでした。
本来つながっていれば、空気が入ってくることはないのですが、まるっと開放されていたため、そこから空気がガンガン流入していました。
配管を仮留めして、流入をストップ。
再度測定開始。結果は・・・
0.3㎠/㎡
まだ何かありそう。
あちこちチェックです。
そして、見つけました。

リビングの掃き出しサッシ。
掃き出しは、二枚の障子がすれ違うようにできている為、隙間が多い構造になっています。
高性能なサッシはその隙間が小さくなるように、重なる部分に気密部材が入っているのですが、調整がうまく言っていないと、うまく機能しないことがあります。
今回はその症状。
サッシを調整して再計測。
最終的に、0.2㎠/㎡の数値となりました。
何とか面目躍如です。
このように、気密測定は、配管が1カ所つながっていないだけで、樹脂サッシとは言え、隙間が出やすい窓の調整だけで、数値が変わるくらいシビアな検査です。
断熱性能を測る指標として、Ua値がありますが、こちらは机上ではじき出した数値。
仕様上、断熱性能の高い部材を使ったり、厚さを厚くすれば見た目の数値は良くするのは簡単です。
施工精度の良し悪しは関係なく、数値は作れてしまいます。
しかし、気密は別です。
C値は、住宅完成後に測定することでしか、その数値を確認することはできません。
先に、断熱と気密は両輪と書いた通り、どちらか一方でも欠ければ、快適な住環境には程遠い暮らしとなります。
だから、気密測定って大事なんですよね。
だからこそ、建築会社選定において、「気密測定やってますか?」って質問がとても重要です。
「やってもいいですよ。」でも、「希望があれば・・・」でもなく、普通に「やりますよ。」という回答が欲しいですよね。
hiroyuki