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つくり手の言葉
少し前に、SNSで急に
「住宅1棟あたりの窓の数が減っている」
という話題を見かけるようになりました。
コメントを見ていると、
「窓が少ない家はダメ」
という専門家らしき人もいれば、
「窓なんて別にいらないじゃん」
という一般の方もいる。
その間に、罵詈雑言も含めて、実にいろいろな意見がありました。
なかなか興味深く見ていました。
話題になっていたグラフでは、住宅1棟あたりの窓数が、2010年には平均20.5カ所だったものが、2025年には15.7カ所まで減少している、という内容でした。
情報の出所をたどると、読売新聞が日本サッシ協会へ取材した2025年9月の記事をきっかけに広がった話題のようです。
さて、皆さんは
「窓の数が減っている」
と聞いて、どう感じるでしょうか。
私は、時代的に当然だと思います。
むしろ、家を建てるご家族も、家を設計する側も、以前よりも真面目に家づくりを考えるようになった結果ではないでしょうか。
窓が大きく、たくさんあって、日が燦々と差し込む住まい。
それは、たしかに素敵です。
明るいリビング。
外とつながるような大きな窓。
風が抜ける開放的な空間。
いわゆる「夢のマイホーム」のイメージとして、今でも分かりやすい魅力があります。
でも、ここには程度問題があります。
何も考えずに設計すれば、
「明るくしたい」
「開放的にしたい」
「窓は多い方が良さそう」
というご要望に合わせて、開けられるところを全部窓にしていくこともできます。
実際、そういう時代もありました。
日中、家のどこに行っても光が差し込む。
南側には掃き出し窓がずらっと並ぶ。
とにかく窓が多い。
一見すると、とても良さそうです。
でも、住まいとして考えるなら、そこで一度立ち止まる必要があります。
まず考えたいのは、冬の寒さと夏の暑さです。
最近の窓は、昔に比べればかなり性能が上がっています。
樹脂サッシ。
最低ラインでも
Low-E複層ガラス。
アルゴンガス入りガラス。
トリプルガラスも認知され、高性能な窓の使用率も増えてきました。
それでも一般的には、窓は壁よりも断熱性能が低くなります。
どれだけ窓の性能が上がっても、断熱材がしっかり入った壁と同じように考えることはできません。
部屋の大きさに対して窓の数や面積が大きすぎると、家全体の断熱性能の数値が良くても、その部屋単体では温度変化が大きくなりやすい。
つまり、UA値などの数値だけでは見えにくい不快感が出ることがあります。
冬に窓際が冷える。
夏に日射で暑くなる。
エアコンが効いているのに、場所によって体感が違う。
こういうことは、窓の配置や面積と深く関係しています。
次に、防犯です。
窓には鍵があります。
最近の窓には防犯ガラスや補助錠などの選択肢もあります。
それでも、窓は外部から侵入される可能性のある開口部です。
必要な窓であれば、もちろん設けるべきです。
しかし、窓を「なんとなく」で増やすことは、防犯上のリスクを増やすことにもつながります。
窓は、暮らしを豊かにする一方で、外部とつながる弱点にもなり得ます。
特に引違い窓は、比較的破りやすいため注意が必要です。
もうひとつ大事なのが、耐震構造です。
昔の農家の家などを見ると、南側に掃き出し窓がずらっと並んでいることがあります。
とても開放感があります。
庭とのつながりもあります。
日本の住宅らしい魅力もあります。
ただし、構造的に見ると、壁が少ない面は大きな地震のときにリスクになります。
建物は、壁で地震力に耐えます。
窓を増やすということは、壁を減らすということでもあります。
もちろん、構造計算をしてきちんと成立させることはできます。
でも、窓の位置や大きさによって、見えない部分で構造的なコストが大きくなる可能性もあります。
「窓が多い=良い家」
とは単純に言えない理由が、ここにもあります。
断熱。
防犯。
耐震構造。
住まいが持つべき基本的な性能を考えると、窓は多ければ多いほど良いものではありません。
窓は、あるべきところにだけあるべきです。
採光が必要な場所。
景色を取り込みたい場所。
風を通したい場所。
外とのつながりをつくりたい場所。
暮らしの気配を整えたい場所。
そういう場所に、きちんと考えて配置する。
それが大事です。
窓の数が減ってきているのだとすれば、それは単にコストカットだけではなく、こうした検討が以前よりもされるようになった結果ではないかと思います。
さらに根本的な話をすれば、
「その窓から何が見えるのか」
という視点も大切です。
窓があっても、見えるのが隣家の外壁だけ。
開けても隣の窓と向かい合うだけ。
カーテンを閉めっぱなしにするだけ。
それなら、その窓は本当に必要なのでしょうか。
採光のために必要な窓もあります。
換気のために必要な窓もあります。
法的に必要な開口もあります。
でも、暮らしの質を考えるなら、数があることよりも、適切に配されていることの方が重要です。
「窓が多いか少ないか」ではなく、
「その窓に役割があるか」
を考えるべきです。
つまり、窓の数が減った、増えたという話は、サッシを取り扱う業者さんにとっては売上や市場規模に関わる大事な話かもしれません。
でも、設計する側や家を建てるご家族にとっては、窓数そのものは正直、そこまで大きな問題ではありません。
大事なのは、
どこに窓を設けるか。
どのくらいの大きさにするか。
何を見せるか。
何を遮るか。
断熱、防犯、耐震とのバランスをどう取るか。
そこです。
窓が少ないからダメ。
窓が多いから良い。
そういう話ではありません。
それを「窓が減った」という数字だけで、良い悪いを言い合う。
SNSらしいと言えばSNSらしいですが、なんとも不毛だなぁと感じます。
と言いながら、それを見ている時点で、私も共犯みたいなものですね・・・
栃木県・宇都宮市を中心に、
高気密・高断熱住宅、全館空調、屋根裏冷房・床下暖房の住まいづくりを行っています。
株式会社オースタムでは、断熱性能や気密性能だけでなく、窓の配置、日射、防犯、耐震、空調計画まで含めて、暮らしやすい住まいをご提案しています。
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