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つくり手の言葉
最近、なぜか急にインスタグラムの閲覧数が多くなって、ちょっと驚いている鈴木です。
それに関連してか、投稿にあるコメントを頂きました。
コメントを頂けるってのはとっても嬉しいですね。
その内容は、「根太工法って、何のメリットがあるか?」というもの。
返信だけだと、内容が簡素なので、今日はちょっとだけ真面目な解説を。
さて、「根太工法」と言われても、なんのこっちゃ?と思われる方が多いでしょう。
根太とは、床を支える木材のこと。
下の写真で、床と水平に細かく入っている材料ですね。
これが根太。
実は、この工法、最近減ってきています。
床の下地に使う合板を厚くすることで、根太を無くす「根太レス工法」というのが増えています。
弊社も2階床は根太レス(剛床)工法ですが、こんな感じ。
下から見ると、
床下地合板の下に根太が入ってませんね。
近年、1階も根太レスの木造住宅が爆増している為、根太工法の現場を見ると、昔の工法的に感じる方もいらっしゃるようです。
ちょっと誤解がありそうなので、今日は真面目に解説モード。
さて、ナゼこんなに根太レス工法が流行っているのでしょうか?
性能?見た目?強度?施主へのメリットは何でしょうか?
根太レスのメリットは、施工がラクなこと。
写真のような床下地合板(構造用合板)は、工場でプレカットが可能なため、現場で図面通りに配置していけば、ビス止めだけで、固定していけます。
更に、1階床の場合、建て方(柱や梁を組み上げる)作業の前に床下地ができている為、作業をするために歩き回っても平らなので、安全性が高いです。
更に、床断熱の建物の場合、床を合板で蓋をしてしまうようなものなので、床面の気密性が取りやすいので、施工精度を上げやすいです。
半面、建て方前に床下地で蓋をしてしまう為、建て方直前に雨が続いてしまったりすると、床下に湿気がたまりやすかったり、
基礎断熱の場合は、通風計画を行わないとカビなどが発生することがあります。
また、床下エアコンなどを計画する際に、床からの通気口の計画を綿密に行わないと、風が回りにくく、エアコンの近くしか暖まらないなどの問題も起こっているようです。
ここまで読んで、「あれ?根太レスって、構造的に強いって聞いたことがあるのに、その話しないの?」と思った方、優秀です。
意外と、「剛床(根太レス)工法なので、地震に強いです!」って、建築会社から説明された方、多いのではないでしょうか?
これ、半分ウソです。
半分というのは、実は1階のこと。
1階の床が根太工法だろうが、根太レス工法だろうが、実は構造計算上、変わりません。
これ、構造計算やってる設計者じゃないとピンとこないと思うのですが、硬い床というのは、地震等の力が加わったときに、歪まずに耐力壁や柱にその力を伝えていくことで、建物への被害を抑えます。
これ、2階以上の床については有効なのですが、1階の場合、木造住宅には基礎という、木よりも硬く、歪まずに力を伝えてくれるコンクリートの部分があります。
こいつがあるので、根太でも根太レスでも、構造計算上、関係ありません。
つまり、1階が根太レス(剛床)だから、地震に強いって理屈は正しくないんです。
むしろ、2階床が根太レス(剛床)であっても、力を伝えるための壁のバランスや柱の配置ができていなければ、意味がありません。
結局のところ、耐震性が良くなるかどうかは、「部分的に何を採用しているか?」ではなく建物全体を通して、「構造計算してバランスをとっているか?」が重要なんです。
ちょっと話がズレましたが、今日のポイントは、根太か?、根太レスか?という話。
ちなみに、弊社が根太工法をしている理由ですが、
先に書いたように、建て方後に外回りがふさがるまでの雨対策がひとつ。
屋根や外壁下地ができてから床下まで、断熱材で一気に気密・断熱施工を行うので、そこまでは床はふさぎません。
また空調面では、根太を敷設すると、床面がちょっぴり高くなるので、壁の中に向かって空気の通り道を作ることができます。
外部に面した壁の室内側に空気の通り道を作ってあげるとあら不思議、床下エアコンで温められた空気が壁、天井とのぼっていきます。
壁、天井もじんわり暖まり、輻射暖房で暮らす空間の出来上がり。
だから、1階は根太工法を採用し、2階床は、構造計算上有効なので、根太レス工法を採用しています。
結局のところ、今流行っているかどうかではなく、建てる住まいの目的や構造によって、どちらを使った方がメリットが大きいか、建築会社が選択出来ていればOKという事です。
「根太レスだから耐震性が良くなります。」って、営業トークには要注意ですよー。
ちなみに、10/12(土)・13(日)にて、根太工法を使った床下エアコンでの全館空調を実際にご覧になれる、「断熱構造見学会」開催します。
完成したら、見えなくなってしまう、高性能住宅の裏側、是非覗きに来てください。
hiroyuki