BLOG
つくり手の言葉
先日、建材屋さんの講習に行った際、会場が水回りメーカーさんのショールームでした。
水回りメーカーさんのユニットバス新商品のPRが挟み込まれました。
ユーザー様のアンケートをもとに導き出さした新商品は湯船が強み。
ゆっくりと、くつろぐ事ができる仕様です。
ふと、思いました。
ナゼここまで、湯船にこだわるのか。
家づくりの中で、水回りは強いこだわりのある方が一定数いらっしゃいます。
特にキッチンは、どの家にもあるものながら、家族ごとに必要な仕様が大きく変わります。
メーカーもサイズも、機器も、更にはオーダーであることさえあって、多様です。
それに対して、お風呂へのご要望は、お手入れが中心となります。
如何にお掃除をラクにできるか。
そしてもう一つが、くつろぎ。
メーカーさんがCMなどで協調するのもココ。
お風呂に入って、体を休める。
日本人として当たり前の習慣。
しかし、この当たり前の習慣が欧米では当たり前ではなくなります。
そもそも、お風呂でくつろぐという習慣がないのです。
お風呂は汚れを落とす場所。
体を洗うためにはシャワーだけで十分なのです。
だから、浴室もシャワーだけだったり、逆に洗い場が無く浴槽でシャワーを浴びる形式になっていたりします。
日本でもビジネスホテルなんかのユニットバスはこの浴槽でシャワー形式が多いですよね。
もちろん、ローマの大衆浴場文化なんてものも世界史で習いましたが、途切れてしまいました。
ではナゼ日本は入浴にこだわるのでしょうか。
元来、仏教的に身体を清める沐浴からきているとか、諸所あるようですが、現代人からすると、ほぼ確実に「体を温める」ということが主になっています。
と言うもの、日本の家は冬寒い。
吉田兼好の「家は夏を旨とすべし」という言葉からもわかるように、木造の住まいは通風を良しとし、板戸で外周をふさぎ、床下のある建築方法。
多湿な日本の風土において重要な要素ではありますが、スカスカであるが故に、「暖房」ではなく、「採暖」という方法で寒さから身を守る方法に特化しました。
ちなみに、「暖房」というのは、空間そのものを温める方法で、「採暖」というのは、焚火に当たるよう高熱源に直接あたって体を温める方法です。
気密断熱ちゃんとすれば、空間を持続的に暖かくできるので「暖房」できるんですが、風が通る建築だから、空間を温められないので直接火にあたる。
納得です。
だからこそ、冬寒い。
寒いから、お湯につかって体を温めるという事が習慣化されたんでしょうね。
逆に言うと、現代、夏の暑い時期はお風呂入りたくない方々が一定数いらっしゃるのではないでしょうか。
「暑いからシャワーで十分。」
身体が冷えていないから、湯につかる必要を感じません。
でも、夏でも一日クーラーで冷え切ったオフィスに居たら、お湯につかりたくなりますよね。
つまり、家が寒いという事が、根本的に湯船の価値を高めているのです。
では、夏も冬も温度が一定の住宅だとしたら・・・
湯船の価値が下がってしまいます。
習慣とか、好き嫌いは置いておいての話です。
だから、「暖房」に特化した欧米では、湯につかる文化が発達しなかったとも思えますよね。
という事で、私自身、温度差が無い暮らしをしていると、湯船につかるという事に対してそれ程強い思い入れが無いんです。
クライアント様のご要望が無いと、お風呂の充填ポイントはお手入れ中心になってしまいます。
まぁ、私が家でのお風呂洗い担当という事もありますので。
何にせよ、暖かい住宅がちゃんと広がっていくと、この先、自宅での入浴という文化の在り方が変わっていくかもしれません。
まだまだ先の話でしょうけど。
でもそう考えると、日本のお風呂という文化って、エキゾチックでインバウンド効果が抜群って意味がよくわかりますねぇ。
hiroyuki