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つくり手の言葉
先日、宇都宮市にて新築工事が着工致しました。
その敷地は、川沿いで表面の土は水はけが悪く、畑にするにも困難。
設計段階にクライアント様からは、
「土が柔らかいから、地盤補強必要ですよね?」と再三の確認を頂きました。
確かに、雨が降った翌日に敷地に行くと、くるぶしが埋まるほどに、足がハマります。
不安になるのは、ごもっともです。
皆さんも、ご自身の建築地がそんな状況だったら、不安に思いますよね。
そんな訳で、今日は地盤について。
さて、先に書いた敷地の状況、一般的には不安に思うものかもしれませんが、地面の状況だけでは、まったく当てになりません。
逆を言えば、水はけがよく締まっている表面であっても、「だから地盤が強い」という判断にはなりません。
というのも、住宅を建築するに当たり、一般的にはコンクリートで基礎を作ります。
この基礎を作るためには、約50㎝程地面を掘削する必要があります。
つまり、表面50㎝の土は無くなってしまうのと同義です。
むしろそこからがスタートラインと言えます。
それが、表面の状況で一喜一憂できない理由です。
見えない部分を判断するって、ムズカシイです。
現在、住宅建築において、地盤調査はほぼ義務化されたと言っても過言ではありません。
スクリューウェイト貫入試験(=SWS試験[旧スウェーデン式サウンディング試験])による「推定」データと、近隣状況や地形図など、様々なデータを元に、そこに建つ建物の荷重で地盤が沈下する可能性があるかどうか判断します。
沈下の可能性があれば、地盤改良の必要があるという判断になります。
住宅建築にあたり、大きな費用の追加にりますし、万が一その土地を手放す事になった際に杭の撤去などの必要が出た場合には更に大きな負担となるので、改良は無いに越したことはありません。
とは言っても、地盤が弱ければ、せっかく建てたお家も安心して暮らすことができなくなってしまうので、データが悪いのに、改良しないという選択肢はリスキーですよね。
地形図や近隣状況も変えることはできない、となれば、家を建てるご家族は指をくわえてみているしかできないのでしょうか?
実は、できる事があります。
地盤調査を建築会社に提案された際に、SWS試験に加え、「土質採取試験」を行う試験方法を依頼してください。
先ほど、SWS試験は「推定」データであると書きました。
SWS試験は、見えない地中を音と荷重と回転数から土質「推定」する試験方法です。
調査員の判断と調査会社の方針によっては、必要以上に安全側での判定となりうるのです。
どこまで行っても「推定」ですからね。
しかし、「土質採取試験」つまりはサンプル調査を行なえば、その土地の見えないハズの土の性質を実際に確認することができます。
つまり、「推定」ではなく「確定」します。
そのため、過剰な地盤改良は必要なくなりますし、
万が一改良が必要な結果が出たとしても、それは本当に必要な状況が「確定」しているのです。
もちろん、SWS試験に加え、「土質採取試験」という手掘りで行う身体を張った作業を伴うので、調査費用は十数万円かかります。
ただ、かなり高い割合で、安全な数値が「確定」できます。
既に地盤調査を行ってしまって、改良判定が出ても、セカンドオピニオンとして、利用するのものアリです。
ちなみに、地盤セカンドオピニオンは、調査データを渡して、机上だけで判定されるものはやめておいた方がいいですね。
結局のところ、最初の調査と同じで「推定」ですから、判定が大差ありません。
更に言うと、それで仮に判定が変わって改良なしになったとして、
「まったく同じデータなのに、何を理由に?」という不安を感じない方はあまりに・・・
ちゃんと、SWS再調査+サンプリング+地形図等周辺データの確認という、全調査を行ってもらってはじめて意味があります。
流石に最近はあからさまな、データ改ざんは無くなったと、業界関係者は仰っていましたが、
正直な話、工務店でも地盤調査データが読めて、どの数値が何を表しているのか、何が決め手で判定が出ているのか、ちゃんと知識を学んだ上で判断できる設計者はほんの一握り。
驚くほど少ないです。
ほとんどの建築会社は、出てきた調査書の判定だけを見て、お客様に
「地盤改良が必要みたいですね。」
「地盤改良がいらないみたいです。」
という事しか伝えられません。
地盤調査の意味を理解すればするほど、データが「推定」から「確定」になることの重要性を理解します。
できる事なら、最初の地盤調査から「SWS試験+土質採取試験」が行えることが理想です。
是非、地盤調査にはサンプリングが付き物。
覚えて帰ってくださいね。
hiroyuki