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つくり手の言葉
家を建てようと考えはじめると、インターネットなどで内観や外観の写真を探しながら、
「こんな家、いいなあ」
なんて思いはじめますよね。
そして、家への興味が深まるにつれて、街に建っている住宅や建築中の家が、急に目に入るようになります。
これまで何気なく通り過ぎていた家の外観や窓、外壁材まで気になってくる。
楽しい時期ですよね。
そんな最近建てられている住宅を見ていると、屋根の形が以前よりシンプルになっていることに気づく方もいるかもしれません。
そう、20年ほど前と比べると、住宅の屋根形状はシンプルになってきています。
これは主に、
という3つの理由による変化だと考えています。
屋根の形が複雑になるほど、雨漏りのリスクは高くなります。
屋根面そのものよりも注意したいのが、谷や棟、壁との接合部などの「取り合い」です。
屋根がいくつかに分かれたり、高さの異なる屋根が組み合わされたりすると、こうした取り合いが増えていきます。
もちろん、適切に設計・施工すれば、複雑な屋根だから必ず雨漏りするわけではありません。
ただし、形が複雑になるほど、設計や施工で注意しなければならない場所が増えるのは事実です。
屋根の形は間取りにも大きく左右されます。
そのため、雨漏りリスクを減らすには、屋根だけでなく、その原因となる間取りがきれいに整理されていることも重要です。
国土交通大臣から住宅専門の相談窓口として指定されている「公益財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センター」が公表するデータがあります。
これは、住宅瑕疵担保責任保険法人5社と同センターが共同利用する事故情報データベースのうち、2009年から2023年までに保険金の支払いが済んだ、または支払いが確定した約15,000件を基にしたものです。
新築木造戸建住宅における雨水の浸入箇所を見ると、
となっています。
雨漏りというと、真っ先に屋根を思い浮かべる方が多いと思います。
しかし、勾配屋根や天窓からの雨漏りは全体の約20%。
サッシまわりなどの外壁開口部と外壁面を合わせると、約56%になります。
つまり、実際には屋根よりも、窓まわりや外壁から雨水が浸入しているケースの方が多いのです。
屋根は直接雨が当たる場所だからこそ、施工する側も雨仕舞を強く意識します。
一方で外壁には、窓や換気口、配管など、さまざまな部材との取り合いがあります。
こうした場所が多いことも、外壁側の事故が増える理由の一つと考えられます。
参考:公益財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センター「雨水はどこから浸入している?」
バルコニーやルーフバルコニーなどからの雨水浸入も、決して少なくありません。
バルコニーは、考え方としては勾配のとても緩い屋根のようなものです。
雨水を受け止め、わずかな勾配によって排水口へ流し、防水層によって下の構造を守っています。
そのうえ、
など、雨漏りにつながりやすい箇所が集中しています。
さらに、落ち葉やゴミによって排水口が詰まれば、通常では想定していない高さまで水がたまる可能性もあります。
そのため、生活上本当に必要でなければ、バルコニーをつくらないという判断も、長期的な安心につながります。
少し話がそれましたが、屋根形状の話に戻りましょう。
2つ目の理由は、太陽光発電システムです。
屋根の形が複雑になると、太陽光パネルを効率よく設置することが難しくなります。
屋根面が細かく分かれていると、
といった問題が起こります。
電気料金を含むエネルギーコストが上昇するなかで、太陽光発電システムを希望される方は増えました。
その結果、屋根のデザインだけでなく、太陽光パネルをどれだけ効率よく載せられるかも、屋根形状を決める重要な条件になっています。
3つ目は費用です。
同じ屋根面積であっても、屋根がいくつかに分かれていれば、施工に必要な部材や手間は増えていきます。
棟、谷、けらば、雨押さえ、壁との取り合い。
こうした部分が増えるほど、役物や下地、防水処理なども必要になります。
また、工事中の足場や作業動線が複雑になり、施工時間も増えます。
屋根材の面積だけを見れば同じでも、屋根工事全体の費用は同じにはなりません。
建築費が高騰している今、限られた予算は、暮らしや性能など、自分たちが本当にこだわりたい部分に使いたいですよね。
雨漏りリスクを減らしながら工事費も抑えられる。
シンプルな屋根には、そんな合理性があります。
ただし、ひとつ気をつけたいことがあります。
それは、外から見るとシンプルでも、雨仕舞としては複雑な屋根があることです。
代表的なのが、建物を四角い箱のように見せるため、屋根のまわりに壁を立ち上げる形です。
この立ち上げた壁を「パラペット」といいます。
外からは屋根が見えないため、すっきりとした四角い建物に見えます。
一方で、屋根面の勾配が緩くなりやすく、屋根とパラペットの取り合い、笠木、排水口など、雨水対策が必要な箇所は増えていきます。
見た目はシンプルでも、防水の納まりは決して単純ではありません。
さらに、軒がほとんど出ていない建物では、外壁や窓に直接雨がかかりやすくなります。
軒やけらばの出が不足すると、屋根と壁の取り合いから雨水が浸入するリスクが大きくなることも、公的な技術資料で指摘されています。
そのため、こうした形状を採用する場合は、設計時の納まり、防水施工、排水計画、完成後の点検まで含めて、十分な対策が必要です。
適切に設計・施工・維持管理すれば成立する形状ですが、一般的な勾配屋根に比べて、長期的なメンテナンスコストと管理負担が大きくなる可能性があります。
多雪地域では、落雪による事故を防ぐため、屋根の雪を敷地内に落とさない無落雪屋根として採用されることがあります。
しかし、積雪の少ない関東周辺で意匠を主な理由として選ぶなら、そのリスクと維持管理まで理解しておく必要があります。
近年は、ローコスト住宅でも、この形状を以前ほど見かけなくなってきたように感じます。
そんな理由から、今どきの住宅は屋根形状がシンプルになってきています。
屋根のデザインは、建物の外観を大きく左右します。
だからといって、見た目だけで決めてしまうと、太陽光発電の搭載量や建築費、将来のメンテナンス費用にまで影響します。
シンプルな屋根には、
という、長期的なメリットがあります。
もちろん、複雑な屋根やパラペットのある家が、すべて悪いわけではありません。
大切なのは、その形にする理由と、それによって増えるリスクや費用を理解したうえで選ぶこと。
家づくりの際には、外観の好みだけでなく、屋根の上で雨水がどのように流れるのかまで、少し想像してみてくださいね。
株式会社オースタムは、栃木県宇都宮市を中心に、高気密・高断熱住宅を手がける工務店です。
断熱・気密・耐震性能だけでなく、温度や湿度、空気の流れまで考え、長く安心して暮らせる住まいをご提案しています。
屋根の形や外観についても、見た目だけで決めるのではなく、雨漏りのリスクや太陽光発電、将来のメンテナンス費用まで含めて設計することが大切です。
新築やリフォーム、住まいのメンテナンスについて、お困りのことがありましたらお気軽にご相談ください。