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つくり手の言葉
2月に入り、寒さもピーク。
氷点下の外気温をみるたびに、自宅の住環境性能を高めておいて良かったと日々感じます。
私の自宅はエアコンで暖房をしています。
近年の新築住宅の多くも住環境性能の高低に関わらず同様かと思います。
半面、エアコンがリビングに「ドーン!!」と見えるのを嫌がる方が非常に増えているように感じます。
SNSなどで、
「壁掛けエアコンを壁の中に押し込んで、フロントに木製格子を設置することで、お部屋をスッキリと。」
的な施工例を多く見かけます。
これ、安易にやるとヤヴァイ奴なんです。
何がヤヴァイかを説明する前に、あらためてエアコンの構造を知っておきましょう。
室外機で熱を回収して、冷媒を通して室内機の②熱交換器に熱を運びます。
(画像はダイキンエアコンHPより)
暖房の時は、熱交換器がアツアツになっているて、冷房の時は、熱交換器がキンキンに冷えています。
そこに室内機の上部から「室内の」空気を取り込み、アツアツ(キンキン)の熱交換器を通して③円柱型のファンで送り出します。
非常にシンプルな構造です。
この室内機を壁の中に埋め込むとどうなるでしょう?
暖房の場合で考えてみます。
室内機が埋め込まれている箱の中の空気を吸い込みます。
もちろん正面にはガラリが付いているので部屋側の空気も流れ込んできます。
熱交換器で暖められた空気がファンで室内機下部から排出されます。
普通に壁設置してあれば、すべての暖かい風は部屋に流れていきます。
では、箱に入って、格子があると?
一部は跳ね返って箱の中に戻ります。
箱の中の温度が上がります。
その空気をまた吸い上げて、暖めて吐き出します。
箱の中の温度が更に上がります。
これが繰り返されます。
ほぼすべての壁掛けエアコンは室内機にサーモ(温度計)が付いていて、空気温度を測定し、設定温度まで温度調節を行います。
箱の温度が部屋よりも先に設定温度に達したら?
エアコンは送風モードや停止モードになるでしょう。
部屋が寒くても・・・
これをショートサーキットと言います。
更に悪いことに、暖かい空気は比較的軽いので天井付近に登っていきます。
エアコンは天井付近の高い位置に設置されます。
結果的に、エアコンに部屋が暖まったと勘違いさせてしまい、性能を発揮することもなく停止。
寒い暮らしの出来上がり。
「でも、エアコンが見えないけど暖かい家あるじゃん!」
と思う方もいらっしゃるかと思います。
その通りです。
隠れても性能が発揮できるように通気に工夫したり、サーモ位置を検討したり、そのためにメーカー、機種選定までします。
温度差が大きくならないように、断熱や気密に配慮し、冷暖房の配置や温度の動き、空気の流れをプランの段階から検討します。
その総合的な計画の上で、エアコンが見えなくなっています。
屋根裏エアコンも床下エアコンも然りです。
隠す事が問題なのではなく、安易にデザインのためだけに隠してしまう事が、大きなリスク要因となります。
デザインを優先するが為に、住む人の暮らしを犠牲にするのであれば、住宅の根本的な意義を失っていると思いませんか?
だから、暖かい、涼しい家はそれをやり続けている建築会社でないとできないんですよね。
上で書いたエアコンの単純な構造すら理解していない設計者、実は山ほどいますから。
参考にダイキンさんの分かりやすい解説貼っておきますね。
hiroyuki