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つくり手の言葉
もうすぐ冬も終わり。
忘れないうちに、オイルヒーター広告から考える暖房と乾燥の話を。
先日、SNSを見ていたら、某イタリアの家電メーカーのオイルレスヒーターの広告が流れてきました。
それが下の文章。
「デ○○ギのオイルレスヒーター(マルチダイナミックヒーター等)は、内部にオイルを密封せず、電気ヒーターユニットで直接放熱板を加熱する構造です。
熱源とパネルが一体化したモジュールシステムにより、オイルヒーターに比べ約2倍の速暖性を持ち、輻射熱と自然対流で部屋全体を乾燥させずに静かに暖めます」
昔はオイルヒーターだったのに、今はオイルレスなんですね。
簡単に構造を言い直すと、電熱線でアルミ板を暖め、その熱が人に届く仕組みです。
電熱線から直接だと熱が強すぎるので、アルミを介すことで体感の熱を和らげています。
この介する材料がオイルからアルミに変わったことで、蓄放熱しやすくなり、立ち上がりも早くなったという訳です。
ここで私が気になったのが、最後の一文。
「部屋全体を乾燥させずに、静かに暖めます。」
あれ?
おかしくないでしょうか。
空気を暖めると、その空気が含むことができる水分量は増えます。
例えば、
室温20℃ 相対湿度50%の空気
1立方メートルあたりの水蒸気量
8.64g(絶対湿度)
室温23℃ 相対湿度50%の空気
1立方メートルあたりの水蒸気量
10.28g(絶対湿度)
では、
20℃ 相対湿度50%の空気を
23℃まで暖めたら相対湿度は何%になるでしょうか?
答えは
42%
つまり、暖房で室温を上げると、
相対湿度は下がる=乾燥方向に向かう
ということです。
ではこの広告は嘘なのか?
そう聞かれると、
嘘とは言い切れません。
ただし
説明が足りない。
ここで重要なのが
輻射熱と対流
です。
そして、この広告には
実は一つ大事な言葉が抜けています。
それは
「エアコンに比べて」
です。
オイルヒーターやオイルレスヒーターは
輻射熱で空間を暖めます。
輻射熱とは、太陽のように赤外線などのエネルギーが
空気を介さずに直接届く熱の伝わり方です。
イメージとしては
熱のビーム
です。
このビームが
・人
・壁
・床
・天井
などに当たり、直接物体を暖めます。
物体の温度が変わると、空間の温度差を均一にしようとして
ゆるやかな空気の流れ(自然対流)が起こります。
それに対してエアコンはどうでしょう。
エアコンは室内機の中のアルミフィンを暖め、そこに風を当てます。
その熱を奪った空気をファンで送り出すことで
部屋の空気を暖める仕組みです。
つまり
対流で暖める暖房
です。
風量が大きいほど、たくさんの熱を部屋に運べます。
暖まった空気によって壁や床も暖まり、
そこから結果として輻射も発生します。
つまり暖房のアプローチは
輻射を使うか
対流を使うか
この違いになります。
ここで乾燥の話に戻ります。
室温を上げると湿度が下がる。
これは分かりましたね。
でも実は、
もう一つ乾燥を感じる原因があります。
それが
空気の動き
です。
人は空気が動くと、皮膚表面の水分が奪われるため
乾燥感を感じます。
風が強いほど、乾燥感は大きくなります。
つまり
対流で暖める暖房は
同じ湿度でも乾燥を感じやすい
ということです。
そして、風で暖める暖房と言えば
エアコン
ですよね。
つまり
オイルヒーターなどは
対流暖房ではないため
「エアコンに比べて乾燥感を感じにくい」
というのが、正しい表現になります。
現代ではエアコンの無い住宅の方が珍しいでしょう。
高断熱高気密住宅でも
全館空調でも
冷暖房の主役はエアコンです。
ただし、エアコンの風が
家族のいる場所に直接当たると
乾燥感は強くなります。
直風が当たりにくい設計にすると
かなり快適になります。
ちなみに、エアコン暖房でも
乾燥感を感じにくくする方法があります。
それが
間接空調
です。
エアコンの風を居室に直接吹き出すのではなく
・床下
・壁の中
・天井裏
などに回します。
するとどうなるでしょう。
暖められた
・床
・壁
・天井
からの輻射熱で空間が暖まります。
構造の工夫をすることで
エアコンでも輻射暖房に近い環境を作ることができるのです。
オースタムがそんな方法を使っているのは
ナイショですよ。
実際に空気が乾燥することと
体が乾燥を感じること。
この違い、分かりましたか?
ちょっと難しい話が続いたので、
来週はもう少しライトな話題にしたいですね。
私たちは、高気密高断熱を前提に、
湿度管理と空気循環まで施工で成立させる住環境をつくっています。
設計(構造計算・温熱計算)から
施工(自社大工+固定協力業者)まで一貫体制。
家を「商品」ではなく、
人が心身を休めるためのシェルターとして考えています。
数値だけではなく、
実際に暮らす人がどう感じるか。
その体感まで含めて、住まいを設計しています。