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つくり手の言葉

基準がアップグレードされるってことは、不適格になる住まいが・・・

4月からの建築基準法改正からはや2か月。

弊社がお付き合いしている協力業者さん、検査機関さんとしては影響を感じることもなく、過ぎていった改正なのですが、

工事業者さんや代理店さんなど、各方面と話をしていると、その影響は想像通り大きなものとなっているようです。

基準法改正ギリギリでの駆け込み申請、4月以降の申請となってしまった事による建築確認許可発行の遅延。

そして、確認がおりないことによる、着工の遅延。

弊社の協力業者さんは、皆、相変わらず忙しい日々を送っていますが、

一部業者さんでは、1か月まるまる予定がズレ込んで、仕事が止まってしまったとか。

今回の改正では、ご存じの方も多いように、遂に日本の住宅も断熱の最低ラインが確定しました。

構造を含む各種内容で、これまで提出することを省略されていた書類の提出が義務付けられ、審査内容が大幅に増えました。

もちろん、これまでとて、「計算しなくてよい・検討しなくてよい」訳ではなく、

「計算・検討した上で、提出しなくてよい」という意味ではありますが、

実際にそれを図面に記し、書類を作成し、提出、検査期間はそれをあらためてチェックするとなれば、時間とコストを要することになるのはしようのない事です。

さて、今日は基準が変わる事について、少し考えてみます。

上の改正において、断熱性能の話をしました。

2025年4月以降に、建築確認許可を得た住宅(※3号建築物を除く)については、断熱等級4以上が義務化されました。

これは、大きな変更です。

例えば、これまで提出しなくてよい書類が提出義務となったのであれば、(ちゃんと計算・検討されているはずであれば、)住む人にとって、2025年4月以前と以後の建築で、差はありません。

しかし、断熱については、存在しなかった義務が追加されました。

つまり、3月に申請した住宅は、4月からの「基準を満たしていない」可能性があるという事です。

もちろん、断熱等級4なんて、「ちょっとペアガラスでも使えば簡単に・・」というレベルではありますが、そもそも検討すらしていない建物であれば、基準を満たしているかは分かりません。

つまり、4月以前に申請した住宅は、完成した段階で今の建築基準法に届いていない建物となります。

このような、法改正により現法の条件を満たせていない建築物を「既存不適格建築物」と言います。

もちろん、申請時は適法なので、急に役所の人が来て家を解体されるとか、警察に連行されるなんて事はありません。

普通に住むことができます。

ただ、気がかりなことがあるとしたら、先々に自宅の増改築を計画する際です。

増改築をおこなうとなると、確認申請が必要となります。

既存不適格建築物において、確認申請が必要な増改築を行う際は、現行の建築基準法に適合させる必要があります。

つまり、断熱性能が基準に満たなければ、現行基準に適合させる必要があるという事です。

増築をしたかっただけでも、住宅全体の断熱改修がセットになってきます。

健康のことを考えると、断熱は大事ですが、ご本人からすれば想定外の出費になります。

ちなみに、法律じゃないので一般的な影響はありませんが、4月からこっそりと ZEH+の基準も改正されていて、これまで再エネを除く一次エネルギー消費量削減率が25%だったのを30%まで上げてきました。

外皮性能(断熱性能)も断熱等級6以上に。

2021年の国交省、経産省、環境省が合同で出した、

脱炭素社会に向けた住宅における省エネ対策の在り方に関するロードマップを見ると、

「遅くとも2030年までに義務基準をZEHレベル(行化外皮基準)に引き上げ」って文言が入っているので、現段階で家を建てるのであれば、最低でも断熱等級5がないと、あと5年で不適格の可能性あり。

どうせ、断熱等級5まで考えるなら、もうちょっと頑張って、健康的で長持ちする住まいのために、断熱等級6~HEAT20G2くらいまで、性能上げておいた方が得策じゃないですか?

永く暮らす住まいを考えるのであれば、今何が欲しいか?だけではなく、先々の暮らしを含めた検討ってとっても大事。

国としてはCO2削減の国際的なお約束のためなのかもしれませんが、

少なくとも住宅建築については、少しづつではあるけれど、健康的で、安心な暮らしの方向に進んでいます。

性能も大事だし、デザインも大事だけど、少し先をどう考えて住まいづくりをするか。

考えるの楽しいですね。

hiroyuki

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