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つくり手の言葉
今年も本格的に冬到来ですね。
毎年、冬になるまでその寒さを思い出す事が出来ません。
特に足元の寒さというのは、本当にツライ。
何せ日本の家は夏をムネとしちゃったからスカスカ。
空間暖房という概念がないから、コタツという超ガラパゴスなアイテムが一家に一台以上という体たらく。
しかし、近年の高断熱住宅の中では、「床下エアコン」というのが徐々に浸透してきました。
結構前から、一部のマニア建築家がやっていましたが、兵庫県の松尾設計室さんの知名度と共に、一気に市民権を得ました。
一般的な床暖房より低コストで導入でき、その家に住む人が唯一家に触れ続ける足の裏が暖かい状態を作れるのは理想的です。
とは言っても、床下にエアコンを入れたら、それでオッケーかと言うと、そんなことはありません。
いろんなリスクが潜んでいるので、そんなに簡単じゃないんです。
以前、見学させて頂いた建築家さんの物件で見た床下エアコンは、稼働前でしたがうまくいかないのが見て取れました。
なぜか?
吹き出し口の真正面に床下地があったから・・・
吹き出し口をどう向けても床の下地に当たる。これではエアコンの直下しか暖まりません。
経験がないと、プロでもこんな簡単なミスをするんです。
床下エアコンで最も重要なのは、空気の通り道。
エアコンという暖房機器自体が、温風で空間を暖める訳ですから、その風が通って行くことが必要です。
例えば、床下に風を送ろうとしても、風の出口がなければ、風は入っていきません。
圧を逃がすための通気孔が必要になります。
基礎の立上りが風の通り道の正面にあれば、そこに風はぶつかります。
では基礎の立上りを無くしたら?
失くした分、補強をしてあげなければ、基礎の構造上強度が低下してしまいますよね。
そもそも、建物全体の温度が保てなければ、足しか暖かくなくなってしまうので、気密・断熱性能がしっかりしている事は基本として必要ですし、もちろん基礎断熱でなければ床下を暖める事などできません。
温度環境や室外機の位置、通気ルートを考え、設置位置を検討する必要がありますし、
何より、隠れてしまう場所に設置されるものに対して、操作をどうする?とか、温度センサーと設定温度の関係をどうする?とか、細かい知見が必要となります。
床下エアコンで、冷房までやろうとしている建築会社さんを見かける事もあるのですが・・・
暖かい空気であれば勝手に上昇してくれるので何もしなくても床から上に上がろうとします。
逆に、冷たい空気は下がろうとするため、床下に留まります。
空気を上に上げるための設備等を検討しないと、冷たい空気が家中に勝手にまわることはありません。
床下結露の原因を作ることもあるので、とってもリスキー。
そんな訳なので、実のところ、ファースの家の本部としては、「床下エアコンはお勧めしないでね。」って事になっています。
ちょっと見まわすだけで、カタチだけで床下エアコンを使い始めている建築会社さんが増えているご様子。
ちゃんと設計できる建築会社。
使い方を理解してくれるオーナー様。
両方が揃わないと、問題の元です。
だから、大手さんも手を出せない領域。
限られた建築会社とそれを見つけられるオーナーさんだけが、体感できる至福。
私が好きなのは、室温23℃ 床面温度26℃ の冬のリビング。
猫も床にペッタリします💗
hiroyuki