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つくり手の言葉
5月に入って日が伸びてきた感が強くなってきましたね。
この時期は太陽高度が高すぎないので、軒の出がある程度ある住宅でも、家の中に日差しが入りやすいので、日中家の中が明るく感じますね。
家の中の明るさって、暮らしにとても大事な要素です。(当たり前)
でも実は、当たり前とされているものが、本当に当たり前なのか、考える必要があります。
今日は、照明について、最近気になっている2点について話してみようと思います。
まずは、一つ目として、照明計画について。
近年、照明器具がLED化したことによって、小さくても強い光を出せる器具が多くなりました。
住まいの隅々まで、煌々と明るい空間。
一片の影もなく、どこでも作業ができる。
個室でもシーリングライトなんかを使うとそんな空間が作れます。
でも、職場ならまだしも、家のあちこちでずっと作業している環境ってあり得ないですよね。
家に居て、照明をつけている時間というのは、基本的にくつろぎ、「就寝」へ向かっていく時間軸です。
この「就寝」と光が関係している事は、ご存じの方も多いと思います。
寝る前はスマホの画面を極力見ないようにされている方もいらっしゃいますよね。
もちろんスマホも強い光です。
就寝前には控えめにした方がイイ。
では、空間は?
家中が煌々と明るい状態から急に暗くしても、睡眠モードには入れません。
強い光を受けているとメラトニンの分泌が抑制されて、眠りを妨げます。
英米の大学の研究文献などによると、少なくとも就寝時間の3時間前には睡眠に向けて屋内環境を整えていく必要があると書かれています。
つまり、子供を21時に床に就かせたいのであれば、夕方18時には、照明の照度を落とし、色温度を下げてあげる必要があります。
簡単に言うと、ちょっと薄暗くしてあげて、照明を暖色にしていくという事です。
新築の打合せのときに、施主は「暗いと困るから沢山照明を」、建築会社は「暗いとクレームになるから沢山照明を」と必要以上の照明を計画してしまうのですが、その結果、「照明があるからとりあえず全部点ける。」に陥っている住まいは少ないと思います。
人は朝日と共に目覚め、日暮れと共に床に就く。
わかってはいるけど、現代人にできる訳もありません。
だからこそ、より質の良い睡眠のためには、そもそも「照明器具をつけすぎない」建設会社側としての提案が必要ですよね。
さて、二つ目は照明器具について。
一次エネルギー計算やZEH、住宅を設計するにあたって、その家がどの程度エネルギーを使うか計算するのが当たり前の時代となりました。
エネルギー使用量が小さければ小さいほど、性能が高く、エコで、社会的に価値がある建物とみなされます。
そのため、上記計算にあたっては、「照明器具は何をつかっているか?」というのが高い数値を出すため一つの要素となります。
現在主流のLEDは、小さな消費エネルギーで、大きな光を出してくれるため、より高い数値を出すためにうってつけの器具です。
調光器具を使えば、先に書いたような明るさの調整や寒色暖色の調整まで行う事が出来ます。
ただ、最近行った私の自宅のリフォームにあたり、リビングの照明器具をLEDから白熱電球に変更してみたところ、まったく空間が変わりました。
同等のワット数相当の器具を点灯しているにもかかわらず、空間がマイルドになるんです。(個人の感想です。)
ガラス職人さんにオーダーしたガラスのシェードを通した光、そして影、これが得も言われぬ揺らぎを起こします。
オーナー様宅にて、同様のガラスシェードをLED電球で試したこともあるのですが、光と影がつぶれてしまいました。
そもそも、白熱電球とLEDでは、光の質が違います。
白熱電球は、実際にフィラメントが燃えて発行している為、炎に近い赤外線。
LEDは半導体素子が点で発光します。
だから強く直線的な光になります。
この半導体素子=発光ダイオードの赤、青、緑の三色比率を調整して、蛍光灯のような色から白熱電球のような色まで表現します。
白熱電球の色合いにするにも、赤だけではできないので、青=ブルーライトが入ってしまいます。
また、あまりものの本などでは書かれていないのですが、LEDや蛍光灯は目には見えない速さで点滅していますよね。
カメラなどを通すとわかります。
あれって、目の負担になっている気もしませんか。
さて、話が長くなりましたが、就寝に向けた空間づくりを考えると、LEDよりも白熱電球を使用した方が健康的と言えるのではないでしょうか。
もちろんエコや電気代も暮らしには大事な要素なので、「全部を白熱電球に戻せ!」なんてことは言いません。
ポイントは、どのようにして家を安らぎの場所とするか。
そのためには、多すぎない照明計画と光の種類を見極めること。
今工事中の物件も、ダイニングにガラス職人さんの1点ものが付く予定。
もちろん電球は白熱電球にします。
hiroyuki