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つくり手の言葉

質問がないときは、まだ準備ができていないのかも。

研修が重なって、バタバタしている今日この頃です。

その中でも特に勉強になったのが、弊社で設計を担当している沙織さんが、昨年から受講している「伊礼塾」。

住宅建築家として有名な伊礼智先生から、プラン設計の直接指導を受ける講義です。

今回は、私も物件見学に同行させていただきました。

どこを向いても、嫌なところがない

伊礼先生は、ご自身の建築について「どこを向いても嫌なところがない」と表現されています。

実際に訪れてみると、本当にどこを見ても気持ちのいい空間で、見るたびにうっとりします。

派手に主張するわけではないのに、居場所のつくり方や窓の切り取り方、光の入り方、素材の納まりまで、どこを見ても気持ちがいい。

「ここがすごい」と一つに絞るのが難しいくらい、空間全体が自然に整っているんですよね。

そして今週は、エアコンメーカーであるゼネラルさんの川崎本社へ。

ゼネラルさんは、2026年1月に旧・富士通ゼネラルから社名を変更したメーカーです。

実は、高気密・高断熱住宅におけるエアコンや空調の研究開発にも、かなり力を入れています。

本社の敷地内には、専用の住宅実験棟が2棟建てられました。

気密性能を変えられる実験棟

その実験棟の建築において、白羽の矢が立ったのが「ファースの家」です。

ファースの気密・断熱工法を使うことで、安定した性能を確保でき、さらに2棟の性能差も抑えられる。

比較実験をする建物として、都合が良かったのだそうです。

実験棟のC値は、0.1㎠/㎡。

そこから調整用の開口部を開け閉めすることで、C値0.1〜1.9㎠/㎡まで気密性能を変え、さまざまな条件で空調実験を行えるようになっています。

弊社でも同様の気密・断熱手法を採用しています。

少なくとも、私たちが採用してきた手法が、メーカーの実験棟にも選ばれるほど安定性を評価されている、ということですね。

エアコン本体の性能実験施設も見学させていただきました。

エアコンという機械を開発するにあたって、メーカーさんが何を考え、どのような条件を設定して検証しているのか。

普段とは少し違う角度から、空調について深く知ることができました。

また質問しすぎてしまいました

この手の見学に伺うと、私は質問をしまくってしまい、見学の予定をギリギリにさせてしまうという、いつもの悪い癖があります。

ご迷惑をおかけしました。

でも、知りたかったことを直接確認できて、メチャクチャ勉強になりました。

伊礼塾では、参加されている多くの設計者の方が、先生や施工業者さんへ次々と質問していました。

一方、ゼネラルさんの見学では、私以外に質問をされる方がほとんどいなかったのが印象的でした。

むしろ、参加されていた工務店の方から、私が質問されました。

「あの質問は、どういう意味だったんですか?」

と。

湿度だけが下がるのは、なぜ?

私が質問したのは、エアコンによる除湿実験の結果を表したグラフについてです。

そのグラフでは、それぞれの除湿方法で室内を除湿した際、室温はほとんど変わらず、湿度だけが下がっていました。

そこで私は、

「これ、なぜ室温が変わらないんですか?」

と質問しました。

私に質問してきた方は、除湿をしているのだから湿度だけが下がるのは当たり前、と思われたようです。

でも、一般的にエアコンで除湿する場合には、室内機の中にある熱交換器をキンキンに冷やし、そこで結露を起こすことで、空気中の水分を排出します。

つまり、空気を冷やして除湿するわけです。

それなら、室温にまったく影響が出ないはずはありません。

だから「なぜ?」と思ったのです。

回答は、除湿性能を比較する試験だったため、室温が変わらないように、あらかじめ熱負荷を加えていたから。

聞いてしまえば、なるほどという話です。

でも、その条件を知らずにグラフだけを見れば、実際の住まいでも湿度だけが下がり、室温は変わらないように見えてしまいます。

何を比較するための実験なのか。

どのような条件で測定された結果なのか。

そこまで分からなければ、グラフの意味を正しく受け取ることはできません。

質問が出てくるのは、少し分かってきたとき

さて、前振りがだいぶ長くなってしまいました。

私はよく、

「なんで、そんなに質問が出てくるの?」

と聞かれます。

なぜでしょう。

私の場合、講習や説明を聞いていて疑問が湧かないときは、大きく分けると二つの状態だと思っています。

1つ目は、内容を完全に理解している。

2つ目は、まだ自分の中に比較するための知識や基準がなく、話がまったく腹落ちしていない。

もちろん、本当にすべて理解していることなんて、そう多くはありません。

分からないから疑問が生まれる。

でも、あまりに分からないと、何を聞けばよいのかすら分からない。

そんな状態って、ありますよね。

だから、住まいについてお客様へ説明しているとき、ご質問をいただけると、

「あ、ここまでは伝わっているんだな」

と感じます。

質問は、理解が進んだ証拠

近年は、快適な暮らしを求める方が増えました。

家づくりを始める前から、ご自身で調べ、勉強されている方もとても多いです。

そのため、こちらの説明に対して、きちんと反応や質問をいただけることが増えました。

説明する側としても、どこまで伝わっていて、どこから説明を深めればよいのかが分かるので助かります。

でも、10年以上前は、見学会で建物について解説していても、ほとんど反応のない方が少なくありませんでした。

こちらも手応えをつかめないまま、そのままお別れすることも多かった。

今振り返れば、お互いにとって有意義な時間にできていなかったのだと思います。

お客様の問題というより、こちらがうまく伝えられていなかったのでしょう。

何を比べればよいのか。

その違いが暮らしにどう影響するのか。

そこまで具体的に伝えられていなかった。

自身の勉強不足を恥じるばかりです。

家づくりについて、聞きたいことはありますか?

これから家づくりをされる皆さん。

住宅会社や実際の建物を見学するとき、聞きたいことは思い浮かびますか?

もちろん、質問を事前に一覧にしておく必要まではありません。

見学して初めて気づくこともありますし、説明を聞くうちに疑問が生まれることもあります。

ただ、何社見ても、どんな説明を聞いても、質問が一つも浮かばないとしたら。

もしかすると、まだご自身の要望や判断基準が、十分に煮詰まっていないのかもしれません。

まだ、漠然と「家が欲しいな」という段階なのかもしれません。

その状態で、プラン作成や見積もり、契約へ一気に進むのは、一度立ち止まった方がよいと思います。

ゴールを決めないまま、アクセルを踏んで走り始めるようなものだからです。

自分たちの要望とは合っていない複数の建築会社からプランや見積もりが出され、違いを整理できないまま契約を迫られる。

結果として、家づくりそのものがストレスにまみれてしまう可能性があります。

時間もかかりますし、比較する資料が増えるほど、かえって判断が難しくなることもあります。

見学会が楽しくなってきた頃が、頃合い

聞きたいことが少しずつ増えて、見学会そのものが楽しくなってくる。

そのくらいが、本格的に家づくりを進める頃合いなのだと思います。

自分たちがどんな暮らしを望んでいるのか。

何を大切にして、何なら優先順位を下げられるのか。

自分たちの価値観と、建築会社の価値観を具体的に比べられるようになってきた証拠です。

建築費が上昇している今、「先延ばしするほど高くなる」という考え方にも一理あります。

実際、時間をかけるほど、建築費が上がる可能性はあります。

これは、家づくりを先送りするデメリットです。

でも、一生に関わる住まいをつくるのだから、焦りは禁物です。

数カ月早く契約することより、自分たちの暮らしに合わない家を建ててしまうことの方が、長期的な負担はずっと大きい。

家を建てる年齢になったから、家を建てる。

もう、そんな時代ではありません。

ただ「家が欲しいから」というだけで建てるには、住まいは高くなりすぎました。

これから先、どのような暮らしをしたいのか。

家族と、どのような時間を過ごしたいのか。

その暮らしを実現するために、どんな住まいが必要なのか。

そこをしっかり考えながら、ロマンを持って家づくりをする。

そんな家づくりのイメージが見えてくると、自ずと質問したいことも出てきます。

だから、質問がないときは、まだ準備ができていないのかも。


※この記事は、オースタムの家づくりに対する考え方の一部をご紹介したものです。

オースタムは栃木県宇都宮市を中心に、高気密・高断熱住宅を、設計・計算・施工まで一貫して考える工務店です。

断熱性能や気密性能だけでなく、温度・湿度・空気の流れまで含めて、家族が長く心地よく暮らせる住まいをご提案しています。

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