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つくり手の言葉
先日、ある勉強会に参加した際に、資料として都道府県別の冬場の死亡増加率のグラフが使われた。
皆さんもご存じの、冬場の死亡リスクは北海道が最も小さく、栃木県がリスク ワーストワンって、アレ。
この有名なグラフ、実は平成26年度(2014年)のデータのものがで回っている。
つまり10年前のものだ。
しかし、今回の勉強会で使われたグラフには、令和4年度 人口動態統計を基に作成と注釈がある。
しかも、栃木県がワーストワンから脱出しているではないか!
驚きつつも、「はて?」と思う。
このグラフは、講師自身が作ったものだろうか、それとも何かも抜粋であろうか?
一次情報がないと、公開しづらいので、質問の時間に確認してみた。
結果的にその情報は、下のダイヤモンドオンラインの記事から抜粋したものだった。
このランキング、人口動態統計という、厚生労働省が、出生・死亡・婚姻・離婚及び死産の5種類の「人口動態事象」を把 握し、人口及び厚生労働行政施策の基礎資料を得ることを目的とした統計調査を基に作成しているとの事。
死亡増加率の元のデータが知りたいと思い、インターネットで検索するが、見つからない。
厚生労働省の担当課に電話で聞いてみたところ、県別、月別での死因の統計は出ているとの事で、データの閲覧方法を教えてもらう。
最終的に、このデータは、記事を書いた方が独自で数字の拾い出しを行い、増加率を計算しているという事のようだ。
計算の方法はもちろん書いていないけど、この方はどうやらビッグデータを扱う企業さんのようです。
果たしてこのデータを、意気揚々とお客様との会話に入れ込んでいいものか、悩みます。
情報の信頼性って、どこから得たものか、そして自分で判断できる内容か、つまり元ネタはどこかって事が重要になります。
近年、若い相談者さんと住宅のお話をすると、本当にたくさんの事をご存じで驚きます。
その情報の収集先を聞いてみると、多くはSNSと仰います。
SNSは超便利ですので、私ももちろん情報収集にSNSを利用します。
ただ、その情報が正しいかどうかという事には、とても気を使います。
正しいかどうかというのは、情報が嘘であるとか、騙されているって訳ではありません。
SNSには、嘘やでたらめではないが、正しくはない情報ってのが、かなり存在します。
その、最も最たるものが、個人の感想です。
良くあるのが、お掃除動画ですが、メーカーが使用を控えるように書いてある薬剤を「良く落ちる」と紹介したり、今は良いけど後々を考えるとリスクが大きそうなものも見かけます。
あくまでも、個人の感想を公開しているだけなので、必ずしもその分野に対して、正しい知識があって発信されている訳ではないものも多いのです。
ものを購入することに対する情報も同様です。
例えば、ワイヤレスイヤホンを買いたくて、感想を調べるとか、商品をただ購入する場合には、使用用途や購入方法など、大きな違いは出ない為、レビューを読んで大きなズレが生じることは少ないかと思います。
これがオーダー品となると、厄介。
買うお店、作るもの、作り方、価値の置き所、たくさんの前提が変わってきます。
オーダー品の最高峰が、まさに住宅。
大手ハウスメーカーで建てるのか、地方ビルダーで建てるか、工務店なのか、設計事務所に依頼するのか、その選択だけでも中身は大きく変わります。
見積もりの仕組みも違えば、住宅を提供するにあたり何を大事にしているか?という価値観すら変わってきます。
ローコスト住宅で建てた方のお得な手法が、そのまま工務店で利用できるケースは多くはないかもしれません。
例えば、本物の木の素材と、木目プリントを横に並べたらプリントの嘘くささが目立ってしまいます。
そもそも本物を使わず、すべてプリントにしてしまえば、難しく考えずにコーディネートできますが、「居住環境性能を考えたら、床は無垢が最適です。」とか言われたら、面倒ですよね。
でも、それが起こります。
無垢材の床の上に、木目プリントのキッチンを置いたら、写真ではバエるかもしれませんが、人間の高性能な目で見たら、がっかりします。
例えを挙げたらキリがない程、「これって、あっち側の家づくりだったら、アリなんだろうけど・・・」って情報が、「家を建てるなら当たり前」的な表現で語られています。
とても面白いけれど、ムズカシイ。
そして、特に親切で厄介なのが、AI。
今や、私もあなたもインターネットを開けば、見たいと思っている情報を自動で選別して目の前に提供してくれます。
常に目の前にあるのは、自分が欲しがってそうな情報ばかり。
「そうそう、これこれ。」
便利だけれども、その情報を取捨選択する力が問われるのが現代人。
もちろん、オーダー品を作るのであれば、最も大事なのはコミュニケーション。
作る人との価値共有。
それがあってこその楽しい家づくり。
どう暮らしたいのか、これから何を大事にしたいのか、ゆっくり話ましょ。
hiroyuki