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つくり手の言葉
先日、毎年恒例の「OUSTAM FES」を開催しました。
今年はオースタム30周年の年ということもあり、たくさんのお客様にお越しいただきました。
ご来場くださった皆様、ありがとうございました。
美味しいごはんにスイーツ、そして団長ikuによるステージやワークショップ。
皆さんが笑顔で会場を後にしてくれて、とても嬉しい一日となりました。
また来年も、ぜひご参加ください。
さて、本日のテーマは「断熱材と耐震」について。
断熱と耐震は、基本的には別個のものです。
断熱は断熱、耐震は耐震。
断熱性を高めるために、断熱材を入れる。
耐震性を高めるために、構造計算を行い、地震に強い構造をつくっていきます。
例えば、一般的に断熱材として使用されるグラスウール。
ふんわりと柔らかく、その繊維の間に動きにくい空気を含ませることで、熱の移動を抑えてくれます。
ギュギュっと押し込んでしまっては、想定した厚みを確保できず、本来の断熱性能を発揮できません。
多くの繊維系断熱材は、この仕組みを利用しています。
空気を含むことで、断熱してくれるのです。
だから、柔らかい素材が多いんですね。
100倍発泡のウレタンフォームも、基本的な考え方は似ています。
100倍発泡の場合、内部の気泡がつながった「連続気泡」という構造を持っています。
食器を洗うスポンジをイメージすると分かりやすいでしょうか。
内部に空気を含み、その空気によって熱の移動を抑えています。
だから、指で押すと簡単にへこむくらい、フワフワなのです。
こうして考えると、断熱と耐震はまったく別のジャンルに思えますよね。
でも、実のところ、断熱材が住宅の耐震性能に影響を与えることが分かってきました。
しかも、その効果が実験によって数値として確認されているのです。
オースタムが採用しているのは、30倍発泡の硬質ウレタンフォームです。
この30倍発泡と100倍発泡では、何が違うのでしょうか。
大きな違いのひとつが、気泡の構造です。
100倍発泡は、先ほど書いたようにスポンジ状の連続気泡。
押されると内部の空気が移動し、比較的簡単に変形します。
これに対し、30倍発泡の硬質ウレタンフォームは、気泡がそれぞれ独立した「独立気泡」という構造を持っています。
その気泡の中には、空気よりも熱を伝えにくい発泡ガスが含まれています。
つまり、断熱しているのは空気だけではないのです。
そして、この30倍発泡の硬質ウレタンフォームは、100倍発泡のものと比較して硬く、変形しにくい性質を持っています。
ここが今回のミソ。
柱や間柱、面材などに密着するように吹き付けることで、断熱材が周囲の部材と一体化します。
硬質ウレタンフォーム自体の強度に加え、木材などに密着する接着性も、構造性能に寄与する重要な要素です。
その結果、地震などで建物が変形しようとした際に、断熱材もその変形に抵抗し、構造を補助することが考えられるのです。
この30倍発泡の硬質ウレタンフォームを使用した住宅については、以前から興味深い実績がありました。
1995年の阪神・淡路大震災。
2011年の東日本大震災。
そして2016年の熊本地震。
福地建装では、これらの震災における住宅の被害状況を調査してきました。
その結果、調査対象となった住宅では全半壊が確認されなかったと報告されています。
オースタムが手掛けた住宅でも、東日本大震災の際に大きな被害を受けたという報告はありませんでした。
もちろん、これだけで断熱材が住宅を守ったと断定することはできません。
建物の構造や築年数、地盤条件、実際に受けた揺れの大きさなど、被害を左右する条件はたくさんあります。
だから、これまでは「断熱材が耐震性能にも寄与しているのではないか」と考えていても、数値を使って明確にご説明することはできませんでした。
実績と感想だけでは、構造性能を証明したことにはならないからです。
ところが、近年の研究によって、その状況が変わってきました。
30倍発泡の硬質ウレタンフォーム「エアクララ」を開発した福地建装では、愛知淑徳大学の古田智基教授らと共同研究を進めています。
その研究で、興味深い結果が得られました。
合板を張った壁と、さらにエアクララを吹き付けた壁を比較したところ、エアクララを施工した壁では、約1.4倍の強度が確認されたというのです。
しかも、この強度の向上は吹付厚さによって多少の違いはあるものの、薄い施工でも確認されたとのこと。
これは、断熱材が構造性能に寄与することを、実験によって数値として示したものです。
これまで、過去の震災における実績から感じていたことに、学術的な裏付けが加わってきたわけですね。
単なる断熱材だと思っていたものが、建物の構造性能を高める働きも持っていた。
これは、住宅をつくる側として、非常に興味深い研究結果です。
そして、この研究はさらに進んでいます。
愛知淑徳大学の古田教授らは、地震によって被害を受けた木造住宅の構造性能を、硬質ウレタンフォームによって回復させる研究にも取り組んでいます。
実験の内容は、なかなか興味深いものです。
地震で被害を受けた状態を想定した木造の試験体に、内部から30倍発泡の硬質ウレタンフォームを吹き付け、再び荷重をかけて、その構造的な挙動を確認するというもの。
つまり、断熱材として使用していたものが、被災した住宅の補強にも役立つのではないか、という研究です。
その公開実験がYouTubeに掲載されています。
ご興味があれば、ぜひご覧ください。
公開実験動画
こうした実験には、大きな費用も時間もかかります。
それでも、一歩一歩、実験と検証を積み重ねて、しっかりとした根拠をつくっていく。
とても大事なことですよね。
今後、断熱材による補強効果をどのように評価し、実際の建築に反映していくのか。
研究が進むことで、住宅の安全性を高める新しい選択肢になるかもしれません。
断熱材が耐震性能まで補助してくれる。
しかも、その効果が実験によって数値でも確認されてきた。
断熱材としては、夢のような仕様ですよね。
とはいえ、だから地震については大丈夫、というつもりは毛頭ありません。
一棟一棟、構造計算を行い、耐震等級3の耐震性能を持たせる。
その上で、断熱材による構造性能への寄与を、プラスアルファの安心材料として考える。
この順番が大事だと思っています。
近年、免震や制震を含め、住宅の耐震性能を高めるためのさまざまな部材が販売されています。
もちろん、それぞれに役割があり、適切に使用すれば効果を期待できるものです。
でも、どんなに良い部品があったとしても、まずは建物の構造がちゃんとしていなければ、その価値を十分に発揮することはできません。
断熱材に構造を補助する性能があったとしても、それは基本となる耐震設計に置き換わるものではないのです。
まずは、設計が大事。
そして、きちんと設計したものを、きちんと施工する。
住宅の安全性を考える上で、何より大切にしたいことです。
オースタムは、栃木県宇都宮市を中心に、高気密・高断熱住宅を手掛ける工務店です。
夫婦の建築士が、デザイン・構造・温熱環境を一体で考え、設計から施工まで自社で行っています。
全棟で許容応力度計算による耐震等級3を標準とし、断熱・気密性能だけでなく、長く安心して暮らせる住まいづくりを大切にしています。